亜久津がテニスをやめた。
悔しくて切なくて、涙が泊まらなかったのは、もう何日も前の事だったと思う。





[   で 、  う   ]





「キヨぉー。」
「なぁにぃちゃん。」
「亜久津、テニスやめちゃうんだよね。」
「らしいねー」

同じクラスの千石清純は、オレンジ色の頭をフワフワ揺らして言う。
私が哀しいよねーと言ってみると、キヨもだよねーと言ってくれる。


何とも無い日常のヒトコマ。




「亜久津、負けたのが悔しかったのかなぁ…」
「そうなんじゃないー?あっくん負けた事無かったもんね。」
「やっぱ!?だよね、亜久津強かったもんねぇ。」


アハハと、お互いで笑いあって黒板を見た。
何も書いていない暗い緑色のボードが
表面の私とのギャップという印象を強くあらわてるのかなぁ思う。







あの時、亜久津が試合に始めて負けた時。
私を見た亜久津は息を切らせながら、銀色の髪と形のいい唇をゆっくりと動かした。
試合を終えた疲れのせいか、妙に艶かしい声音で亜久津は言った。








「応援、来るのおせーよ。」














あのとき私が、もっと早く応援に行ってたらならば、








2004/12/6
 自分を責めてもどうしようもならないのに。

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