「私ね、ルシウスとセックスしたいの。」
「…馬鹿も休み休み言ったらどうだ先輩?」
「あんたが私を先輩って呼ぶとキモイわセブルス。」
「吾輩は嫌味のつもりでそう言わせてもらったんだが。それにキモくて結構だ。」









[  換  能 は 備  て    








「まぁ、とにかく私はセックスしたいの。」
「セックスセックス女が言うもんじゃないと思うが。」
「あら、あんたにしちゃ随分まともな事言ってくれるわね。」



私は、読書をしながら人の話しを聞くセブルスに皮肉を込めてそう言った。
しかし彼はそんなのになれているらしく、何くわぬ顔で読書を続けている。




「私はね、今でもルシウスを愛してるわけよ。」
「ルシウス先輩は結婚してるだろうが。しかも息子にドラコがいるのも教授は知っているだろう。」
「だけどあんなのは政略結婚じゃない。教授って呼ぶのもキモイわ。」
「……否定はしない。」




セブルスは大きな溜息をついた。
私はセブルスとは反対で、大きく息を吸い込んだ。





「あ、これからマジメな話しするからちゃんと聞いてよ。」



へへっと笑って、緩んだ頬の筋肉を引き締めた私は、いつになく真面目な顔をつくった。
セブルスは何だ、と言って机の上にあったティーカップを手に持った。
ゆっくりとティーカップを唇につける動作が時間の流れすら遅く感じさせる。







「セブルス私ね、デスイーターに戻ろうかなぁって考えてるの。」




カチャン、という音がなったかと思うと、床にはバラバラになったティーカップ。
何やってんの、と言うと馬鹿言うなと返された。
セブルスは軽く咳払いしてバラバラになったティーカップに魔法をかけた。
みるみるうちに元の姿に復元されて行く。




「…何故そのような事を考えたのだ」




土気色の顔から、もっと生気を失われた感じの表情をうかべたセブルス。
微かに眉間の皺が増えているのを感じさせる。
でもまぁしょうがないか、なんて呑気に考えてみる。





「だって、デスイーターに戻れば確実にルシウスはいるわけでしょ?」
「…否定はしない」
「それに、我らが主君ヴォルデモート様も生きてるらしいし…
 あのくそネズミが傍にいるってのは気にくわないけど。」
「噂によれば、『あの人』は生きているらしいな…それにしても何故今さら」





セブルスはもっていた本をパタンと閉めた。
そして、面倒臭そうに私の方にむいた。





「やっぱルシウスのせいじゃないかなぁ。こんな事考えるのって。」
「お前程の権力者がこの現実以上に何を望むんだ…?
 デスイーターがどうとか言うわりには、魔法省で随分人望が厚いそうじゃないか。」
「そうそう。私なんか人気者なのよ。ファッジも好いてくれててくれるから昇進なんて楽ちん楽ちん。
 名誉とか権力は大満足なんだけどねぇ…」





私は言葉を切ってあきれ顔のセブルスに笑いかける。
今の私は、ヘラヘラしただらしない顔をしているんだろう。
やっぱり自分には、真面目な顔なんて似合わない事に気付く。





「ほら、ルシウスってば私を避けてるでしょう?」
「……」
「沈黙は肯定とみなすわよ。」
「かまわん」
「…(くそうっ!即答かよ)」








『 ル シ ウ ス は 、 私 を 避 け て る 』

なんて切ないワードだろうか。
私は避けてる理由もおおかた知ってるから、ルシウスを責める事が出来ない。
だけど私は、ルシウスがどうなろうとルシウスとの時間が欲しいわけだ。
そんな事セブルスに言ったら、随分我が儘な女だな、なんて馬鹿にされるだろうけど。





「学生の頃さ、私とルシウスってすごい仲良しだったじゃない。」
「あれは仲良しというより、ただのバカップルだろう。」
「黙らっしゃいセブルス。まぁそんなのどうでもいいけど、ホントにそう。
 私とルシウスはお互いにお互いがいないとダメだったんだよね。」





そうだったな、と昔を懐かしんでるセブルスは貴重だ。
昔はいっぱいジェームズ君達にイジられていたので、
学生時代なんてセブルスにしちゃ消し去りたい過去だろうに。
何となく私も笑ってみせる。





「ほら、ルシウスったらあれよ。掃除洗濯とか…家庭的な事何も出来ないじゃない。
 私は反対で、…料理はダメだったけど掃除洗濯はバッチコイ!だった。
 それに、私はフラフラしてるから、ルシウスみたいにしっかり人がいないとダメ。」
「先輩は頭もよかったが、お前は馬鹿だったしな。」





セブルスは今度はふんっと鼻で笑ってみせた。
一応ふくろうもいもりも一発合格したわよ、と私は膨れてみせたが、
サッとその表情をいつもの顔に戻して、小さく溜息をついた。
なんだか涙を流したくなる。まるでそういう溜息だ。









「最近ね、どうしてもダメなのよ。頭の中ルシウスでいっぱいで。」

私、どうしようもないくらい、あの人の事愛してるの。











「だけどルシウスは、私と会ってしまえば、もう今の生活には戻れない事を知ってる。」

ルシウスも、どうしようもないくらい私を愛しているから。
















「だから、無理でもして会おうと思ったの。
 そんな今の私とルシウスを繋ぐものは“デスイーター”しかないもの。
 どんなに私が活躍しても、それが彼の目や耳・脳に入っても、
 彼は私への想いを隠そうと必死になる。天下のルシウス様が必死なのよ?笑っちゃうわ。」




セブルスは、ゆっくりと目を閉じた。
私は、頬を伝う水をゆっくりと拭う。






「泣くな。吾輩が泣かせたみたいじゃないか。」
「あんたのせいよ」
「馬鹿言うな。なんで吾輩がお前なんかを泣かせなくてはならないんだ。」
「お前なんか、ってヒドイなぁ。セブルスのせいで泣いてるのに。セブルスのせいなんだから。」



あははと笑って、座ってた椅子から腰を浮かせる。
セブルスはちらりと、横目で私の姿を捕らえた。
セブルスなりに気をつかっているのがヒシヒシと伝わる。





「…勝手に言ってろ。ただし、そんな事世間に言いふらすのはやめてくれたまえ。」
「言いふらしてやる。」
「頼むからやめてくれ。吾輩の身を危険にさらすのは頼む、本当にやめてくれ。」
「何であんたの身が危険になるの。」
「いろいろとこちらにも事情があるのだ、お前には関係ない。」



セブルスは本棚に視線をむけた。
私はセブルスの部屋からでていく事を決めて、扉へと向った。
ドアノブに手をかけた私は振り返ってセブルスの方をむく。








「やっぱね私、ルシウスの事を今でも愛してるの。
 あのSM気味のセックスとか、たまにみせてくれる優しい顔とか全部がたまらなく愛しい。
 忘れられないの。もう別れてから何年もたってるのにね、馬鹿みたい。」







いったん言葉を切った。
セブルスはゆっくりと笑った。
その笑いは、本当にその通りだと言っている。
つまりは私の事を馬鹿だと言ってる。










「だけど…、馬鹿みたいだけど私は、あの人なしで生きていくなんて無理なんだよねきっと。
 結婚するから別れてくれって言われたとき、プライドなんか捨ててしまえばよかったのにね。
 愛しあっていたのに、お互いに嫌だ、の一言が言えないなんて情けないプライドだよ。」





「…そうだな。まったく先輩もお前も馬鹿だな。」

















愛しています。
今でもルシウス、貴方を一番愛しています。














2005/3/11
 ルシウスがすきです。