「人狼なんて糞食らえですよ先生。」
スリザリン生にしては珍しいテンションの彼女は
・という名前だ。
[ 蟻 の 糞 よ り も さ さ い な 事 ]
2人でベッドの中でゴロゴロする。
何かをスるわけもなく、ただゴロゴロして下らない話をする。
それが私との日課だ。
「先生からしたらすごい事だろうけど、私からしてみたら先生なんて『ただ』の人狼なんです。」
は何事もなかったかのようにサラリと言ってのけたが、私は微かな動揺を隠せずにいた。
彼女の口から人狼という単語がでるだけで、どうしようもない感情に囚われてしまう。
そんな微かな動揺を隠して私は、あははと笑う。
するとは、いつもとはうって変わった真剣な顔をして私の手を握った。
温かい『人間』の温もりに、
どうしようもない感情がさっきとは違って暴れ出す。
涙が流れそうになる。
この『人間』の、という『人間』の温度に涙が流れそうになる。
だけどしょせんはその程度だ。
涙が流れそうになる『ダケ』の事。
実際に涙なんて流れてこない。
大人になると、どうもこういったどうでもイイ理性ばかりが働いてしまうらしい。
はゆっくりと、丁寧に私の顔を見た。
穏やかな笑みを浮べている彼女の目はいつもより細くなっていて、
そのわずかに覗く黒い瞳に私が映っている。
情けない顔をした自分の顔を映る。
「先生、」
が私を呼ぶ。
「私から逃げるのやめましょう。」
キュッと握られた手の温度が胸にある傷をなぞった。
「…」
私はたぶん最初で最後であろう世界で一番大切な人の名前を呼ぶ。
私 は 人 狼 な ん だ 。
音にならない声で訴えた。
普段通りの声音での名を言ったつもりだったが、どうやら声のトーンが
落ちていたようで、それに気付いたは満面の笑みを浮かべて
私の瞳を、真直ぐに見た。
「そんなこと、蟻の糞よりささいな事です。」
私はそういったに口の端をゆっくり上げて微笑む。
そして最愛の人の頭を抱き寄せる。
には、私の哀しみすらも届いてしまうのだろうか。
2005/6/8
先生が人狼であることなんて、私にとって『蟻の糞よりささいな事』。