「最近元気ないわよ。」
リリーは眉を寄せながら心配そうに私の顔を覗き込んだ。
[ お 前 は 馬 鹿 か ]
私はスリザリンでリリーはグリフィンドールだったけど、私達は入学当初から仲良しだった。
わりかし一緒にいる時間もおおい。そんなリリーに、最近元気ないわよと言われたのは昨日の出来事だった。
いつもどおり雪の中を散歩していた私にリリーは一言そういった。
私はそうかなぁ、と言って雪道を黙々とあるいた。
リリーは寒そうにしてたから、さきに学校に戻ってもらった。
「…はぁ…」
私は今、そんな昨日の出来事を、暖炉の炎をみながら思い出していた。
正直は話し、元気があると言ったら嘘になる。
ぶっちゃけ元気がないのだ。
「…僕の目の前で溜息をつくな」
ふと目の前をみると、難しそうな本をもったセブルス・スネイプがソファにすわっていた。
そういえばここはスリザリン寮の談話室だ。忘れてた。
「あ、セブルスだ。こんばんわ」
私はセブルスに一言挨拶をして、さっきと同じように暖炉の炎を眺めた。
しかしそれは、思いもよらない人物に遮られてしまう。
そう、あのセブルス・スネイプが不機嫌そうな声で、おい、と声をかけてきたのだ。
私はびっくりして、上ずっていたであろう声で何と聞いた。
ぼけっとしてる時に声をかけられるとびっくりするじゃないの!
「お前、最近やけに元気ないな。」
彼の口からでてきた言葉に、私はますますびっくした。
いつも、私の事を鼻で笑って馬鹿にするセブルスが心配してくれてるんだ。
失礼だけど、世界がおかしくなったんじゃないかとまで思った。
私は昨日リリーに言ったように、そうかなぁと返した。
「何か悩みでもあるのか?が静かだと気味が悪い。」
「私はねぇセブルス。この数日間ずっと、難しい事考えててたの。」
「…お前でも難しい事が考えられるのか?学年1馬鹿なお前が?難しい事を?…はっ。」
「そうさ!学年1馬鹿でも、難しい事ぐらい考えられるんですよーっだ。(うわ、今鼻で笑ったよコイツ!!くそぅ…)」
「はっ…。貴様の難しい事など、僕の考えている事よりはるかに幼稚だろう。」
「そんなこと言うんだったら、セブルス!あんた最後まで私の話しを聞きなさい。本当に難しいこと考えてるんだから!!」
「あぁ、聞いてやろう。お前の下らない幼稚な考え事とやらを聞いてやろうじゃないか。」
セブルスはさっきと同じように鼻で笑った。
私は、私を馬鹿にするのもたいがいにしろ毒キノコ!と叫んでやりたかったが、
こんな真夜中にそんなのを叫ぶなんて常識はずれだと思ったから、私はセブルスを睨むだけにした。
セブルスは本をテーブルにおくと、私の方をむいた。さっさと話せと目が訴えている。
「男と女ってさ、」
私は小さくそう言った。
するとセブルスが聞こえないと言いたそうな顔をしたので、私もう少し声のボリュームをあげた。
ゆっくりと丁寧に、且つ少しテンポは速めに思ってる事,つまり考えている事を喋った。
セブルスは黙って聞いていたけど、後半ぐらいになると、私の話しに意見をするようになった。
私は、あのセブルス・スネイプとちょっと対等に語らってんじゃ無いの?と思って嬉しくなる。
「子孫を残すために性行、つまりセックスってのは欠かせないわけじゃん。
でもね、それってよくよく考えてみると結構無駄な行為って感じじゃない?」
「だから、それはおかしいと言っているだろう。子孫を残す上での行為の何が無駄なわけだ?」
「だって全人類がそんな事してれば、いずれは莫大な数になるわけでしょ。それに子孫,子孫って言うけど、
もとは1つだったわけだし。それなのになんで祖先から受け継がれてきたからって子孫を残さなきゃいけないの?」
「お前の言う『もとは1つだった』という考え方はあまりにも馬鹿げている。
そんな事言ったら地球誕生の規模で考えなければならないだろうが。」
「何言ってんのセブルス、難しすぎて意味わかんないよ。しかもたぶん、私の言ってることと着眼点が違ってる気がする。」
「ほう…貴様は、わざわざ話しを聞いてやってる僕に文句を言うのか?」
「あ、話しズレたからもとに戻すけど、とにかく私はセックスって無駄だと思うわけ。」
「(貴様、偉そうにしやがって…!!)
だから、何が無駄なのか『正しい言葉』でストレートに言え。さっきから聞いてればお前は訳の分らん事ばかりだ。
真意を話せ。お前が『何故子孫を残さなきゃいけないのか』などという難しい事を考えられるわけがないだろう!!」
さりげなく失礼だよセブルス。私は冷静に突っ込みをいれた。
しかしセブルスの中では『何故子孫を残さなきゃいけないのか』は難しい事らしい。
私にはそれが何故だかわからなかったけど、まぁほっといた。
(だって、人間が子孫を残すのは文明を残すためじゃないの?)
「…だからね、性行が無駄だってことなのつまり。」
「だからそれは子孫を残す上で、欠く事が出来ないとお前も言っていたじゃないか。」
「だって、何億何万?といる精子は卵子とくっつくためにとてつもない苦労をするのに勝者は1人しかいないわけでしょ!?」
「…ケース バイ ケースだがな。」
「例外はおいといて!!」
「その何億何万を無駄にするんだったらそういう事する意味はないでしょ!?」
「いや、その発想はおかしい。その何億何万は無駄になるだろうが、勝者はいるんだ。」
「だぁかぁらぁ!!その何億何万ってのが無駄なわけ。
勝つのは1人しかいないんだからそんなにいっぱい必要ないじゃない!!」
私は一通り言い終えると溜息をついた。
ちょっと難しい話だったんじゃない?ちょっとだけ得意げに思った。
セブルスとこんなにハイレベルなトークができるなんて全く考えてもいなかった。
どことなくスッキリした気分で暖炉の炎をみた。
「……精子って可哀想だよね…。結局卵子とくっつけるのは何個もあるうちのほんの一握りなわけだし…」
今までのセブルスとの会話を思い出し、感傷に浸りながら私はそう言った。
そんな私の微妙な変化(つまり感傷に浸っていること)に気付いたセブルスは、眉間に皺をよせた。
いつもの10倍増しだ。ちょっと怖い。
「……もしや、それがの言いたかったことなのか…。」
暖炉の炎だけが明るい部屋にセブルスの声が響く。
その声は、怒っているような呆れているような声音だった。
私は口からもらしてしまった『真意』に頭が痛くなった。
そしてそんな表情をしていたセブルスにすこし怖じ気付いたけれど、そうなんデスと首を縦に振った。
「…お前は馬鹿か……お前の事を心配してやった僕は何だったんだ…」
セブルスは冷たくそう言ったけど、ふっと優しく笑った。
その冷たい声とは反対に、笑った顔が優しかったから、
私はちょっとだけ、ほんのちょっとだけドキッとした。
2005/3/17
言わせたかった言葉は『「……精子って可哀想だよね…。結局卵子とくっつけるのは何個もあるうちのほんの一握りなわけだし…」』でした。
そして、セブルスに『お前は馬鹿か』と言われたかった……
私は個人的になんですがセブルスに言わせた通り『何故子孫を残すのか』って難しい事だと思います。
ヒロインのいうように、文明を残すために必要だけど、はたして、この文明を残してよいのか考えものです。